昨日と今日とでミスをしたらアウトな作業があった。
ミスをしても命を取られたりするわけではないので、大丈夫といえば大丈夫なのだが、俺の働く現場は業務委託なのでこの先が危うくなるんだよね。
そんなワケで気合を入れるために普段は吸わない紙のタバコを買ってきた。

KENTの6ミリ。
これは警備をやっていた頃に少しだけ吸っていた期間があったタバコ。
当日、同じ現場にいた加藤さんという人が吸っていて、1本貰ってから俺も吸い始めた銘柄だった。
加藤さんは自衛隊出身で、航空機の管制で働いており、仕事にメチャクチャ真面目なおじいさんだった。
ホントはパイロットになりたかったそうだが、目が悪くて、その夢は叶わなかったと話していた。
ルールに反することは絶対に許さず、仕事に関してはとても厳しかった。
加藤さんは俺が警備員になった際に仕事を熱心に教えてくれたんだよね。
俺はテキトーなタイプの人間だったので、かなり指導された記憶があるよ。
細かいことを指摘されて「このジジイ〜!」と何度も思ったよ。
仕事に関しては厳しいおじいさんだったが、歳の離れた俺をかわいがってくれていた。
休憩中にお菓子をくれたり、昔の話をよく聞かせてくれた。
加藤さんは真面目すぎるがゆえに、同じ職場に敵が多かった。
警備員はいい加減な人間も多かったのでね。
今日をのらりくらりとやり過ごせば、それでいいと思うような人が沢山いたんだよね。
加藤さんはそんな現場に嫌気が差して、俺が1人前になると同時に現場を去っていった。
現場を去る当日。加藤さんは職場に置いていた備品をいくつか俺にくれた。
「頑張ってね」と俺に声をかけてくれた。
後で聞いた話だと、加藤さんは現場の副隊長候補だったらしく、営業の人が退職したことを残念がっていた。
加藤さんは今でも元気に過ごしているだろうか。
久しぶりにKENTを吸いながら、そんなことを思った。
いつの間にか、あの日々が懐かしく思えるくらいの月日が過ぎたのだな。
加藤さんたちのおかげで、テキトーな俺も仕事にはある程度真面目に取り組む人間になれたかな。
今も色々といい加減ではあるけどね。
では、またね。


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